フードジャーナリスト曽我和弘の三田“食”紀行

フードジャーナリスト曽我和弘氏が福助グループをめぐる食紀行。スタッフから素材や料理にかけるこだわり、お客様に対する思いなどを聞きだしながら、曽我氏の鋭い論評を交え「三田の食」を語っていただきます。

Vol.28:
福助グループがオリジナルラーメン店を大阪で展開。ラーメン・唐揚げ・ゴーストキッチンの三つの要素を含んだ新ブランドとは・・・
大阪は旭区・城北公園そばに三毛作レストランがお目見得した。この店は、ラーメン専門店「麺男(めんおとこ)」を主体として、そこに唐揚げセンター「からふく」と、今流行りのゴーストキッチン要素を含ませた、いわば三毛作店である。福助グループは、三田市内でいくつもの店舗を運営しているが、昨年の木津川市の出店に続き、三田以外の地域でも飲食店展開を行おうとしている。3月にオープンした「麺男」「からふく」もその一例。福助グループとしては初の大阪出店のラーメン屋といえよう。店舗もこれまでの三田市内のものとは少し趣を変えており、大阪を意識したのか、壁には、天神祭や道頓堀、ビリケンさんに太陽の塔と、大阪の風景が描かれているのだ。「新しいとんこつスープを開発したのであえて大阪に出店した」と福西さんが語るように、私も興味津々で新ブランドのラーメンと、唐揚げを味わって来た。

新ブランドラーメン店だけではなく、三つのスタイルを含んだ店舗

前回に引き続き、三田以外のレポートを書きたい。このところ福助グループは、地元三田市以外でも積極的に店舗展開を行っている。その事例が木津川市の「VANSAN木津川店」であったり、その横の「塩と醤 木津川店」であったりするのだが、この春にもう一店、大阪市内でラーメン店が新たにお目見得している。3月6日にオープンした「麵男(めんおとこ)大阪旭区店」がそれだ。この店は、福助グループのオリジナルラーメン店で、城北公園すぐそばにあり、城北公園通りに面したロードサイド店なのでわかりやすい。ローソン生江三丁目店などと隣接しており、共用の駐車スペースが広いので車で移動する人には便利だろう。

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コロナ禍になり、飲食業界がダメージを受けたことによってその業態自体は様変わりしつつある。かつての店内食事だけのパターンでは終わらず、デリバリー機能も持たせながら経営を多角化する傾向が出て来た。大阪市内に福助グループが開いた「麵男」も実はその類いで、三毛作レストランの形態を打ち出している。本来ならラーメン専門店「麵男」だけで運営する所を、同キッチン内に唐揚げセンター「からふく」を併設し、店内での唐揚げ販売のみならず、テイクアウトにも対応している。おまけに4月からは、ゴーストキッチンの要素を加え、デリバリー部門を充実。当初は、弁当や丼のデリバリー化を図る予定だが、営業していくにつれて色んな要望や顧客からの要望が出て来れば、それに対応できるようなゴーストキッチンシステムも企画していくことになるだろう。まさにコロナ禍の多角化が生んだ飲食店形態で、これまでのような待ちの商売(店内飲食)だけでなく、攻めの姿勢をも打ち出したスタイルといえよう。d

表記としては、ラーメン専門店「麵男」×唐揚げセンター「からふく」となっているのだが、やはり店舗の主体はラーメン店「麵男」である。福助グループでは、これまでオリジナルブランドの「博多屋台ラーメン博多麺々」「博多ラーメン六寶(むほう)」「神戸らーめん屯豚(とんとん)」の三つと、みそラーメンに特化した「田所商店」、塩ラーメンと醤油ラーメンの混合店「塩と醤(ひしお)」を、そしてフランチャイズ店でもある「希望軒」「熟成豚骨一番軒」と、あらゆるスタイルのラーメン店を運営して来た。今回の「麵男」は、とんこつラーメンを主とした店で、福助グループの新たなブランドに成長させようと考えているものだ。福助グループでは、「六寶」や「屯豚」「希望軒」を運営する中で、とんこつスープの味を追求して来た。一概にとんこつラーメンと括られるが、ブランドごとにスープは異なり、各々の個性が生きている。それらの味追求の中で、新しいとんこつスープができたので、思い切って違うブランドで店を立ち上げてしまおうと、「麵男」独自のラーメンを打ち出すに至っている。e

とんこつというと、匂いが強(きつ)い、クセがあるなどのイメージを持たれがちな嫌いがある。オーナーの福西文彦さんによれば、それは下処理の仕方で解消されるそう。「匂いが臭くなるのは、スープの原材料として使う豚骨の下処理を丁寧に行っていないからなのです。仕入れた豚骨の血抜きを完全に行ってから、きれいにそうじすれば臭いの強いものにはなりません」との事だった。「麵男」では、丁寧な下処理を行ってからスープづくりに用いることで女性でもすっと入っていけるようなスープを作っている。それとしつこいイメージになるのは、げんこつ(豚の足首から先の骨の部分の俗称)でスープを作るからでもある。げんこつは、どうしてもその性質からこってり系になってしまいがちだ。「麵男」においては、そうならぬようにげんこつだけでなく、頭(かしら)と豚骨を用いることでクセのない上品なスープを実現している。「頭(かしら)を加えることで獣(けもの)臭さがなくなり、上品な味になります。豚骨も加えるので、スープにはまろやかさが出て来ます。この三つの部位の複合体が『麺男』のとんこつスープの特徴といえるでしょう」と福西さんは話している。

この風味が最も醸し出ているのが「元味(もとあじ)ラーメン」。これは「麵男」の根幹を成す白いとんこつスープのラーメンで、クセになりそうな味でもある。この「元味」に、マー油を加えたものが「響(ひびき)ラーメン」で、これは黒いスープになっている。マー油とは、にんにくを主に香味野菜をラードで揚げて作った香味油で、これが加わることで一気にコクがアップする。にんにくの風味が強くなり、オイル感を持つスープに変身するのだ。にんにく好きな人は、さらにテーブルに置いてあるにんにくを擂って加えると、その風味が一層強くなるのでオススメしたい。もう一つの赤いラーメンは、辛味が強い商品。「元味」スープに、糸唐辛子のペーストを加えたもので、スープは赤く色づき、辛味が増す。これは、その名も「赤からとんこつラーメン」として売られている。このラーメンは単に辛いだけではなく、旨みも有した味になっているのだ。gf

「麵男」では、とんこつを主にしているが、全く別のスープのラーメンも商品化している。これらはとんこつ以外のファンも取り込むためのメニューであろう。それが「熟醤油ラーメン」と「貝汁塩ラーメン」の存在意義でもある。前者は、文字通り醬油ラーメンで、清湯(チンタン)スープがベースとなる。清湯とは、とんこつのような濁ったスープではなく、透明で澄んだもの。寸胴の中で80℃を保つように鶏や豚を煮込むと、この手のスープが出来上がる。「麵男」では、清湯スープを基にして醤油で調味しており、それがこの店のオリジナル醤油ラーメンになっている。一方、後者の塩ラーメンは、清湯スープをベースにアサリの旨みが出た貝だしを加えて塩で調味したもの。魚介の風味がしてあっさりめのスープになっている。ih

ラーメンだけではなく、唐揚げも一つの売りに

唐揚げセンター「からふく」と銘打ったイートインとテイクアウトの両方を持つシステムは、流行の唐揚げブームを背景にして誕生したスタイル。商品は唐揚げのみだが、もも肉・胸肉・手羽先・軟骨と部位ごとに異なる調理法でメニュー化しているのが特徴的。この商品については、日本料理歴30年のベテラン職人・中谷世志樹さんがレシピを作っている。中谷さんは、有名料亭でも修業して来た実績を持つ人で、自身の技術はもとより色んな所を食べ歩きながらこの唐揚げを作ったそうだ。店内でもテイクアウトでも基本は一個120円からで、単品は個数ごとに注文となっている。ただ、それだけでは顧客の需要を満たさないだろうから、お得なセット売りも用意。その一例が「ファミリーパック」(2~3人前)で、これには、もも唐揚げ(プレーン)6個、ムネ唐揚げ(甘酢ダレ)6個、手羽先唐揚げ3本が入っている。4~5人前用は、唐揚げ(プレーン)10個、ムネ唐揚げ(甘酢ダレ)10個、手羽先唐揚げ4本という内容に。一人向けには「おつまみボックス」も販売しており、こちらはもも唐揚げ(プレーン)2個、手羽先唐揚げ2本、ヤゲンなんこつ50gの内容だ。その他、デラックスパックや詰め合わせと商品群は多彩である。

同店では、弁当の販売も行っており、オープン早々なかなかの好評ぶりだとか。周辺に住宅や会社があるので需要があると思われる。弁当は「もも唐揚げ弁当」や「ムネ唐揚げ弁当」が主で、その二つの要素が入った「相盛り弁当」もある。唐揚げだけではなく、「のり弁当」や「ギョーザ唐揚げ弁当」もあり、こちらも商品ラインナップは多彩。今後、これらにゴーストキッチン要素も加わっていけば面白い展開が見られるのかもしれない。jk

<データ>

ラーメン専門店「麵男」×唐揚げセンター「からふく」大阪旭区店

住 所 大阪市旭区生江3-16-34 城北公園共栄ビル1階
T E L 06-6978-4438
営業時間 11:00~23:00
休 み なし
メニュー

元味ラーメン 760円
響ラーメン 790円
赤からとんこつラーメン 850円
熟醬油ラーメン 760円
貝汁塩ラーメン 760円
ファミリーパック(2~3人前) 1920円
ファミリーパック(4~5人前) 3040円
もも唐揚げ弁当 750~950円
ムネ唐揚げ弁当 750~900円
相盛り弁当A 850円
のり弁当 500円
※料金は全て税別

プロフィール

曽我和弘
(フードジャーナリスト・フードプランナー)

廣済堂出版、あまから手帖社、TBSブリタニカ社など出版畑を歩き、1999年に編集制作兼企画会社の㈲クリエイターズ・ファクトリーを設立。大ベストセラーになった100円本や朝日放送とタイアップした「おはよう朝日です。雑誌です」を出版し、ヒットメーカー的存在に。プロデュース面でもJR西日本フードサービスネットの駅プロデュースに参画し、その成功によって関西の駅ナカブームの火付け役と称されている。現在、月に13本の連載を抱え、食関連のコラムを多く執筆している。

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