フードジャーナリスト曽我和弘の三田“食”紀行

フードジャーナリスト曽我和弘氏が福助グループをめぐる食紀行。スタッフから素材や料理にかけるこだわり、お客様に対する思いなどを聞きだしながら、曽我氏の鋭い論評を交え「三田の食」を語っていただきます。

Vol.24:
パンチの効いた塩ラーメンが売りの一つ。天然素材と自家製麺で勝負する新たなラーメンブランド
「希望軒」「博多ラーメン六寶」「一番軒」など三田でラーメン店を展開する福助グループに、今秋新たなブランドが加わった。店名を「大阪塩系 三田 塩と醤(しおとひしお)」という塩ラーメンを基軸にした新店舗だ。「塩と醤」の店名でわかるように同店の特徴は、塩スープと醤油スープにある。本来、塩ラーメンというと、あっさりしすぎて食べ応えに欠ける印象が否めないが、ここのスープはパンチが効いて満足感のある味。無添加と天然塩にこだわった構成で、スープと塩のブレンドの仕方が絶妙。口に入れた時に塩味が広がり、旨みとして舌に伝わる。7月17日にオープンするや、多くのお客様が来店する人気店となっており、コロナ禍で飲食店が苦戦する中、順調に新業態を展開している。今回は三田・南が丘にお目見得した「塩と醤」の魅力をレポートしてみよう。

福助の地にラーメンの新ブランドが登場

DSC00684今夏より三田市南が丘のロードサイドに新たなラーメン店がお目見得している。店名を「塩と醤」といい、塩ラーメンを一つの自慢とした新業態だ。同店を運営するのは、福助グループで、ラーメン分野では「希望軒」(新三田店と丹波篠山店、和田山店)「神戸ラーメン屯豚」「博多らーめん六寶」「一番軒」(三田店)に次ぐブランドとなる。
もともとこの地には、福助グループの中核店であった居酒屋「宴 ふく助」があった。オーナーの福西文彦さんは、グループ発祥の店だけに思い入れが強かったようだ。ところが今春、新型コロナウィルスが世の中を覆い、外出を自粛する動向から飲食店全般は大打撃を受けてしまった。酒を出す業態は殊更、大変で「福助」も休業を余儀なくされている。福西さんは、コロナ禍では、居酒屋業態が当分苦戦を強いられると踏んだようで、「福助」をいったん閉めて(移転して再開の予定)新たな業態を模索しようと英断を下した。コロナ禍になっても幸いグループ内のラーメン店は好調だったこともあってこの地に新しいラーメン店「大阪塩系 三田 塩と醤」を作ることにした。

DSC00713タイトルの大阪塩系とは、「塩元帥」に始まる大阪の塩ラーメンを指す。「福助」の跡地に7月17日にオープンした「塩と醤」は、どこにもなかった塩ラーメンの新たなブランドとしてスタートしている。元来、塩ラーメンとは、醤油ラーメンと同様に古くから親しまれて来たラーメンである。その発祥は、諸説あって定かではないが、明治17年に函館の「養和軒」で出していた南京そばがルーツではないかとも言われている。現在、ラーメンは博多から流れて来た豚骨がいつしか主流を占めるようになった。ところが2000年頃からその風潮に一石を投じようと、塩ラーメン店が続々とオープンして来たのだ。塩ラーメンのスープは、あっさり系が多い。醤油や味噌のようにコクでごまかしが効かないため、だしとタレの味がダイレクトに反映される。なので他にも増してスープが決め手となる。「塩と醤」で店長を務める塩本裕望さんも「ラーメン屋は、豚骨が多く、それだけに他と差別化できる」と話している。塩本店長に聞くと「塩と醤」のスープは、鶏ガラが主で、そこにゲンコツ(豚の大腿骨)、豚足、野菜、昆布、鰹節、サンマ節などが加わり複雑な風味を醸し出しているそうだ。このスープと塩のブレンドの仕方が味の妙。塩も赤穂のものなど三種の天然塩から成る。一般的な塩ラーメンは、あっさりめだが、「塩と醤」はパンチがある。スープを口に入れた時、塩の旨みが広がり、スープ素材の複雑さも加味して独特の旨みを構成。印象に残る塩スープになっている。

DSC00720「塩と醤」の特徴は、無添加と天然素材にある。前述したように塩も天然塩で、具材は手仕込み。麺も自家で打って作る。店玄関を入ったすぐの所が製麺コーナーで、ここで粉から作っているのだ。「麺は防腐剤を入れていないので二日と、持たないんです。なので毎朝打って足りなければ夕方に更に打つ。そんなシステムで製麺しています」と塩本店長。なのでキャッチコピーには、“自然素材と自家製麺で創る、本物の手作りラーメン”と書かれている。

「塩つけ麺」のボリュームにびっくり

DSC00706「塩と醤」のメニューは、「天然塩ラーメン」(760円)を中心に「梅塩ラーメン」「ネギ塩ラーメン」の塩系がある。塩ラーメンが売上げの大半を占めるのかと思いきや、塩本店長の話では「最近、めきめき醤油系の人気がアップしてきている」そう。こちらは「醤油ラーメン」(760円)の他に「濃口醤油ラーメン」「ネギ醤油ラーメン」というラインナップだ。聞くところによると、醤油は日本の発祥地とされる湯浅のものを使用しているとのこと。塩角がなく、あっさりした味になっているのはその所以でもあろうか。

DSC00695福西さんの話では、「塩つけ麺」と「醤油つけ麺」が共に特徴的だそう。「塩つけ麺」のつけ汁は、塩ラーメンのスープと同じもの。つけだれなので多少は味を濃くしている。福西さんの話を聞きながら出て来たものを見てびっくり。何と、麺が240g(大盛りだと360g)もあってかなりのボリュームなのだ。「なので男性には人気が出ているんです。若い子は、ボリュームを求めるもので、240gもあれば満足してもらえるんじゃないですか」と話していた。

DSC00696ラーメンの方の麺は140gで、大盛りだと200gになる。トッピングは別注文でメンマ、半熟味付け玉子(共に110円)やチャーシュー増し(一枚190円、二枚380円)など。トッピングはメニュー内にあるものの、スタンダードメニューにも十分具材は入っている。ちなみに「天然塩ラーメン」には、チャーシュー、焦がし玉ネギ、白ネギ、メンマ、水菜、糸唐辛子が具材として使われていた。

DSC00702「福助」の跡にオープンしているようにここは比較的大バコ。スタートは一階のみ(53席)のオープンだったが、最近は2階の利用も始めた。福西さんには色んな展望があるようだ。「二階の座敷席を利用してファミリーで行けるラーメン店を目指しているんです」。どうやら三世代が一緒に利用する店が理想のようで、二階席ではゆっくりしてもらうようなメニュー構成も考えているという。「できれば、ラーメン屋で鍋宴会なんてのも面白いでしょ」と話す。この店舗の特性を考えればそれも一つの案かもしれないと考えてしまった。福西さんのそんな思いが現実になる日を待って、日々の「塩と醤」の盛況ぶりを見て行きたい_。南が丘に7月にお目見得した新ラーメン店を取材して当方もそんな光景を想像した次第である。DSC00723

<データ>

大阪塩系 三田 塩と醤

住 所 三田市南が丘1-50-3
T E L 079-553-8022
営業時間 平日11:00~15:00、17:00~24:00、土日祝日11:00~24:00
休 み 無休
メニュー

天然塩ラーメン 760円
梅塩ラーメン 870円
醤油ラーメン 760円
濃口醤油ラーメン 870円
塩つけ麺 880円
醤油つけ麺 880円
味噌ラーメン 880円
チャーハン 540円
どて丼 540円
三田牛ドーナツコロッケ 180円
唐揚げ 490円

プロフィール

曽我和弘
(フードジャーナリスト・フードプランナー)

廣済堂出版、あまから手帖社、TBSブリタニカ社など出版畑を歩き、1999年に編集制作兼企画会社の㈲クリエイターズ・ファクトリーを設立。大ベストセラーになった100円本や朝日放送とタイアップした「おはよう朝日です。雑誌です」を出版し、ヒットメーカー的存在に。プロデュース面でもJR西日本フードサービスネットの駅プロデュースに参画し、その成功によって関西の駅ナカブームの火付け役と称されている。現在、月に13本の連載を抱え、食関連のコラムを多く執筆している。

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